イベントレポート詳細Details of an event

第16回 AGC studioデザインフォーラム
U-30 Young Architect Japan. 開催記念トークイベント

2012年4月
講演会/セミナー


佐藤 私は普段、構造設計をしているので、ガラスを構造に使った例を中心にいくつかのプロジェクトを簡単に紹介します。
最初は2003年頃に藤本壮介さんとつくった「伊豆ハウス」という建物です。
これはガラスとアクリルで構造をつくり、そこに木造のスラブを乗せるというものでした。1段35cmのものを11段積み重ねるという構造です。小さな離れみたいな別荘なのですが、種々の事情で工事が中止になってしまいました。とはいえ一応、上棟まで行ったので構造としては成立しています。
さて、ここではガラスとアクリルをこの立面図のように混ぜて使っております。青い部分がガラスで赤の表示がアクリルです。
この構造をすべてガラスで作っていたら、作ることはできるのですが、もしある段が壊れてしまうと、全部崩落してしまうことになるので、それを避けるために鉛直荷重をアクリルで支えることにしたのです。アクリルだと割れてもガラガラと崩れ落ちることはありません。
ただ、この時は強度とコストのバランスをよく吟味しました。ガラスとアクリルを比べると、ガラスのほうが圧倒的に固くて強い
一方、アクリルは弱くてコストも高い。そこで、アクリルをいかに少なくするかが課題になり、ランダムに入れるアクリルの位置と割合を調整しながら、強度とコストを計算しました。

 

もう一つの例は「クリスタル・ブロック」です。
2004年に山下保博さんの作品になっています。ガラスブロックというのはご存知のように通常は隙間にモルタルを詰めるのですが、そこに収まるくらいの繊細な鉄骨を入れて、そのフレームとガラスの組み合わせで耐力壁の性能を実現するというものです。伊豆ハウスもこのガラスブロックも、詳細な実験を経て実現に至っています。

 

その次に、先ほど石上さんから紹介された、ヴェネツィア・ビエンナーレの温室でまたガラスを使った構造体を実現することになりました。これは、非常に繊細な鉄骨のフレームにガラスを覆わせるというものでした。
「温度、湿度をできるだけ機械に頼らず、極めて存在感の薄い建築を」という石上さんのご要望だったので、言うのは簡単ですが(笑)、石上さんの場合は、言うだけでなく、必ず「こうやったら~」という原理のアイデアや実現性まで考えておられるので、私も「なんとかしよう」とします。
あの時も最終的に、極めて透明な、存在感の薄い建物ができたと思います。そこでは実現に向けた重要なプロセスがいくつかありました。
この写真は、バーナーで鉄骨を炙っているところです。熱を加えると鉄は縮みますので、その性質を利用して鉄骨にむくりを入れる、いわゆる”むくって”いるわけです。
あの温室のラーメン構造では荷重がかかると梁が大きくたわみます。石上さんは昔テーブルを作られたことがあり、それもむくって薄く仕上げていました。ヴェネツィアの場合も原理は同じで、たわむ分だけむくったのです。
また、あの時にもう一つ思いついたのは、鉛直の荷重に対しても似たような発想を入れられるということでした。重力方向の鉛直の荷重に対して、柱にも少しだけ曲げモーメントを入れてあります。それにより、長期荷重に対する変形を減らすことができる、と気付きました。
ヴェネツィアには地震はほとんどありませんが、風速20mくらいには耐えられる必要があり、8mmの薄いガラスを引っぱりのブレースとして使ったのです。薄いガラスは圧縮に対して弱いですが、引っぱりには効きます

 

それから昨年はまた石上さんと一緒に「グラス・バブル」を考えました。これは厚さ3mmのガラスを5枚×5枚=計25枚をつなぎ合わせて、9m角のガラスのドームをつくるというものでした。目地は塩ビの薄いシートでつなぎました。その25枚の塩ビでつながれた薄いガラスを空気圧で膨らませるというものです。
コンプレッサーで空気を送り始めると、途中は多角形に膨らんでいきますが、最終的にはこういう滑らかな曲面ができます。3mm厚という薄さのおかげできれいにたわみます。
さて、現在、私の研究室ではガラスを構造に使うという研究をしています。旭硝子さんの寄付講座でもありますが、かといってガラス限定で研究しているわけでもありません。ただ、ガラスは昔から興味がありましたし、その構造も追究したかったのでいい環境を与えてくださったと感謝しております。
そしていま取り組んでいるのは、細い金属枠にガラスを拘束して使うというもの、ステンドグラス状のものです。ガラスというのは、透明な材料の中では強度、剛性、耐久性に関して突出して優れています。
先ほどアクリルは弱いと言いましたように、強さという面でガラスに勝る素材はありません。だからこそ構造に使う魅力があると思いますし、みんな使えるなら使いたいと思っていますが、一方で非常に脆性的な性質もありますね。割れるときは本当に突然、パァーンと割れてしまいます。変形能力に乏しい。鉄骨などはグニュっと曲がるのに、ガラスではそういうことがない。だからガラスはスチールなど固い材料との接触に弱いです。

 

先ほど紹介したヴェネツィア・ビエンナーレでは、ガラスを鉄骨の骨組みに取り付けましたが、ブレースとして付けるにはある程度しっかりと付けておかねばなりません。多少でも甘くなって接触が生じると、割れてしまうという、そのくらい繊細にできています。
通常のガラスは割れてしまうと非常に危険で鋭利なエッジができてしまいます。そうした脆性はかなり扱いにくいので、構造に利かせられないという状況でしたが、これまでの経験から、もう少し拘束して使えば構造でも使えると踏んでいて、実際、そういう感触があります。そうした扱いにくい材料を扱えるようになれば他の材料の設計にも行かせると考えています。
それから、まだ研究途上ですが、塊状のガラスを使ったり、溶着させたりして構造の形態を生み出せないか、と考えているところです。巨大なガラスの塊を作ると、均質に冷やすのが難しいため4ヶ月くらいかかるらしく、そうした実践的な使い方まで考えながら研究を進めているところです。

 

太田 ありがとうございました。では、続いて平沼さんにお願いします。

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