イベントレポート詳細Details of an event

第16回 AGC studioデザインフォーラム
U-30 Young Architect Japan. 開催記念トークイベント

2012年4月
講演会/セミナー

30歳以下の建築家を対象とした「U-30」のコンペティションを記念して、その世代のもうひとつ上の世代(40歳前後)の建築家と構造家を招き、審査を担当した関係者とともに、ガラス建築の新しい可能性やあり方について話し合った。(文中敬称略)

 


太田 モデレーターの太田です。まず今回のパネリストの方々を紹介いたします。
石上純也さんは建築家で、2009年に日本建築学会賞の作品賞を受賞なさっておられます。また2010年にはヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展にて金獅子賞を受賞なさるなど、そのご活躍を会場のみなさんもご存知のことと思います。
石上さんのお隣が構造家の佐藤淳さんで、石上さんとのコラボを含め野心的な構造をいくつも手がけておられます。2010年からは東京大学で特任准教授として研究にも取り組んでいらっしゃいます。
そして私の隣が建築家の平沼孝啓さんで、大阪を基盤に活躍なさっています。U-30コンペの仕掛人でもありまして、私と一緒に審査もしていただき、今回の企画をここまで導いてくださいました。
今日のフォーラムでは「U-30」について、その経過を平沼さんと私でご紹介し、その後、順にそれぞれの実践の中から今後のガラス建築の可能性についてご意見をいただき、最後にディスカッションをしたいと思います。ではまずU-30について平沼さんに、その概要というか、いきさつをお聞きします。

 


平沼 U-30というのは30歳以下、アンダー30の若手建築家によるコンペティションです。現在、若手の建築家たちが経済的に独立しづらい状況があるので、彼らに対して何らかの場をつくれないかと考え、2010年からスタートし、今年は3回目になります。
出展者は増田信吾さんと大坪克亘さんのコンビ、米澤隆さん、大西麻貴さん、海法圭さんの4組を指名で選び、瀬戸口洋哉ドミニクさん、加藤比呂史さんとヴィクトリア・ディーマーさんのコンビ、金野千恵さんを公募で選び参加していただきました。

 

太田 そのU-30に参加していただいた方々に、また別の企画として今回のガラスの企画展にも参加いただいた、というわけですね。
多様な光のある空間」というテーマでパネル提案をいただき、優秀な作品はこのAGC studioで展示するというものです。平沼さんと私、それから旭硝子の武田雅宏さん(旭硝子ガラスカンパニー日本・アジア事業本部市場開発室室長)が審査員となり、昨年10月にこのスタジオで最終審査を公開で行いました。
最終的には、1階に展示した、加藤比呂史/ヴィクトリア・ディーマーさんペアの作品「ガラスと森の建築」が最優秀に選ばれました。それ以外で二次審査に残ったのは、パネル展示もしてあったように、海法さん、それから増田さん、大坪さんのペアによる作品です。
今回のコンペではいくつかポイントあったと思います。
私個人としては、ガラスの新しい技術展開があればいいな、と考えていたのです。せっかくAGCさんで展示されるのですから、提案によって何かコラボのきっかけになるようなものが出てくればいいと考えていました。二次選考へ進めなかった作品は、その点でちょっと足りなかったと思います。

 

平沼 僕も同感で、何かガラスの技術にまつわるもの、新しい建築につながるものがあればと期待していました。優秀作品はこのスタジオで展示できるわけですが、単なる展示にとどまらず、建築として実現性があるか、という視点で審査をしていた気がします。

 

太田 これが二次審査当日の会場の様子です。海法さんの案は当初、下に展示してあるパネルとは違い、海ではなく公園の中のパビリオン的な建物でしたよね。極限まで薄くした薄膜ガラスで空間を囲い、風でも波打つようなガラスを使ってみると、どうなるのか? という提案でした。
これはAGCの武田さん一押しの案で、いま液晶パネルなどに使われている薄膜ガラスを建築に使ったらどうなるのか、そういう期待や夢があるわけです。

 

平沼 そうですね。自然の影響を受けてしまうガラスというのが魅力的で、他の2案とも甲乙つけ難く、1回の判定では決まりませんでした。

 

太田 次のこのパネルが増田、大坪さんの案で、窓越しに隣地まで光を呼び込もうというポエティックな案でした。

 

平沼 僕はかなり好感を抱いたアイデアです。

 

太田 面白いのですが、それはガラスなのか、窓なのか、という疑問も付いたのです。
そして最後が、下に実物展示されている加藤さんヴィクトリアさんの提案で、森の中にあるガラスのパビリオンといったプレゼンテーションでした。森の木の枝で規定された空間にガラスをはめ込んでいくというものでした。

 

平沼 下階で実際に体感できますけれど、あのデモンストレーションは、もう少しイケたのではないかという印象もあります。審査のときは、構造体が自然を選んでいくという点で、もっと魅力的に映りました。

 

太田 構造解析までして実際にああいう空間を作るのは大変だったと思います。今回のコンペの重要なところは、提案された案を、このようにAGCさんの技術サポートなども得ながら実施まで持っていくということです。さまざまな担当の方々、専門の方々とディスカッションしてAGCさんとしては大変だったと想像しますが、僕はすごくよくできた、と思っております。

 

それではここからは、ゲストの方々に話をうかがわせていただきます。今後のガラス建築に必要な視点、ガラスの可能性などについて、まずは石上さんからお願いします。

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