イベントレポート詳細Details of an event

第15回 AGC studioデザインフォーラム
U-30 Young Architect Japan. 開催記念対談イベント

2012年3月30日(金)
講演会/セミナー

加藤 海法さんにお聞きしたいのですが、海法さんはいつも材料をピュアに使われると思っています。そうした材料との距離感や、それぞれの材料が持つポテンシャルを追究しようというモチベーションが、どこかから来るのか(笑)、聞きたいです。

 

海法 そうですね、僕は建築など何か形を生み出すにあたって、自分の想像力を疑っていて、どれだけスタディを重ねても必ず人工的になってしまうだろうと思っています。
では何が人工的なのかというと、形態なのか、素材なのか、それとも環境なのかと、いろいろあると思うのですが、少なくとも形態に関しては人工的なものといいますか、恣意的なものをできるだけ求めないつもりで、だから今回のアイデアも幾何学としては最も単純な円にしたわけです。でもそれは加藤さん・ヴィクトリアさんが木を道標にして使ったことと変わらないと思っているのですが。

 

倉方 形の上で人工や人為を加えないというのは、どうして?

 

海法 僕が建築学科に入って、設計を学んできた過程で、最初は例えばザッハハディッドや奇抜な形に影響を受けました。未だに一般的に建築家の建てた建築にはそういう人為的であることを疑わない傾向があると感じていて、そこへの反動ですかね。
モダニズムを乗り越えようと一部の建築家はしてきたわけで、例えばデコンストラクションとかポストモダンとかがありますが、一時期のバブルの絶頂期にも建築家たちが「金があるから何でもできる!」と考えて形態ばかりに可能性を見いだそうとしていたことに対する疑いがあって、いわゆるアンチテーゼですね。

 

倉方 加藤さんはどう思いますか?

 

加藤 ザッハハディッドは自分の中に自然を見いだしているのですが、僕らはそれに加担したくないのです。でも何もしないのは違うと思っていて、その再解釈ですかね。だから、海法さんが円にしたのも、「結局、人為的に考えているじゃないか」という気もするのです。

 

倉方 形の持つ強さではなく「そこへ人間が入ったときにどうなるのか?」という発想をするのが普通。しかし海法さんの発想では、最後に人間が入ってくる。それが珍しいと思います。あそこまで計算して作っておいて「最後に人間かよ!」「大人は無理!」とか、人間の振る舞いを最後に出してくるのはとても変わっていると思うのですが(笑)。

 

海法 実は、正直なところ「これでは大人が歩けない」と分かった時、ちょっと嬉しかったのです(笑)。僕は宮崎駿に影響を受けています。宮崎さんはあれだけ大多数の大衆に受け入れられるアニメを作っていながら、根本のところでは大衆とか、社会とか人間を嫌っている部分がある。その社会に対する眼差しが創造の原動力になっているのだと思っています。僕もそういう面はあるなぁと。

 

倉方 クリエーションというのは個々の人間を否定した上で、さらに飛躍したものを作ろうという面があり、それを宮崎駿もやっていると思います。実は建築も本来的にはそういうものだと思うのです。

 

海法 昨年のU-30のシンポジウムの時、第一線で活躍なさっているアラフォーの建築家の方々から、僕らの世代は「社会や環境にやさしい」と評されました。アラフォーの方々はある意味「社会なんて認めない」と言っておられて、一方、僕はそういう社会の拒絶とは違うかたちで社会を見たい。
それが、1つの可能性としてエンジニアリングへの傾倒に出ていると思うのです。

 

加藤 あの時、10歳上の世代の方々から、僕らの世代が「おりこうさんだ」と批判を受けました。
でもそれは人間好きか人間嫌いかということではなく、いわゆる「パンク」にいったん走った後、更生して帰ってきた感じになりたいのです(笑)。新しいもの、新しいものへと概念的に走ることで、すごく現実とかけ離れたものをつくってしまう傾向があり、それに対して、もう少し違うアプローチをすればできるんじゃないか、という印象なんですよ。
やはり自分たちの世代は前の世代と違うという気がしています。

 

それから僕は増田さん、大坪さんのお二人がとても面白いと思っています。というのも例えば僕が東京に居るときは八王子から出てくるわけです。
そうすると新宿や都心部まで電車で1時間近くかかる。車窓を通して改めて東京の街を見ていると、家と家の間に狭いながらも隙間があって「これでいいのか?」と思うのです。あの隙間を全部なくせば八王子と新宿が30分の距離になるのではないか(笑)、と思えて。日本の都市のあり方を考え直したほうがいいと思うのです。
もちろん単純にヨーロッパのように一連のブロックにすればいいというものではありません。でも(光や明るさが大好きな)日本の高密度を考えた場合、増田・大坪さんのようにもう少し光をシェアすることなどを考えたほうがいいと思うわけです。ブロックで作ると隣に光がいかなくなるけれど今後の都市計画を考えると、あれはすごく可能性があると思います。

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