イベントレポート詳細Details of an event

第15回 AGC studioデザインフォーラム
U-30 Young Architect Japan. 開催記念対談イベント

2012年3月30日(金)
講演会/セミナー


海法 こんにちは。優秀賞をいただいた海法です。
まず、この画像を見てください。これは地球の画像です。かなりひいた位置から撮っています。こうして見てみると海が大半を占めていることを実感できます。
僕ら建築の人間はだいたい土の上のことしかやっていません。つまり、地球にはもっと知らない世界や可能性があり、そこにガラスを使ってみようというのが僕の提案です。
こちらの画像はもっと近づいて撮った南国の海です。きれいなので底のほうまで透けて見えていますが、海がもっと深くなっていくと透明度が保てず奥まで見えなくなります。
僕はダイビングが趣味で旅行先などでも潜っているのですが、海の中へ行くとこういう画像以上のすばらしい世界を身をもって体験できます。

 

そしてこれは沖縄の「美ら海水族館」の巨大水槽の写真です。大きくて分厚いアクリルガラスを使い、何千tという海水を入れ、海の世界を再現しています。そうした水族館という歴史が建築の世界にもあります。
ただ、水族館はやはり水族館であり、自然の海とは違います。魚の集まり方であったり、密度であったり、光の具合であったり、さらに仕切っているガラスに映り込む鑑賞者の存在であったり、海ではない状態がそこにあります。

 

僕は今回、水族館を提案しました。薄膜ガラスを海面に置いてみると海と空の間に薄い境界面ができます。
薄膜ガラスというのはAGCさんが開発した特殊なもので、例えばTFT液晶や携帯電話等のディスプレイガラスに使われています。厚みが0.1~0.28ミリと、フロート法で製造できる世界最薄のガラスです。曲面としても使え、こうしてロール状にしても割れないようなものです。
薄さの分かりやすいイメージとしては理科の実験でスライドガラスの上にのせるカバーガラスのようなイメージです。あれが0.1mmです。
波が比較的穏やかな海上に、それを非常に巨大化して直径100メートルの形で薄膜ガラスを浮かべるというものです。

 

そうすると、水中グラスと同じ原理で、海水面が微細な波がない硬質な表面に置き換わるので、海の中がとてもきれいに見えます。上から眺めると、通常の海より深いところまで見えるはずです。世界最薄で世界最大の水族館が生まれるわけです。
このガラスの薄くて軽いという特性(0.246kgf/m2)により、面全体が0.25mmだけ沈下した状態でまず自重と浮力が釣り合って浮かびます。
ただし条件があって、絶対にガラスの端部が水面より上にないといけません。そうしないと水がガラスの上面に流れ込んできて沈んでしまいますので、その条件だけは絶対に保持しないといけません。
その条件を満たすためにアメンボの足と同じ原理を水族館の円周にぐるっと利用するアイデアを取り込みました。アメンボの足は羽毛状にふさふさしていて少し油も含んでいます。撥水材を塗ったブラシのようになっているのです。
そうした撥水の仕組みによってしりぞけた水の分の浮力が働くし、さらに水の表面張力も働くため、軽いガラスの端部を水面より上に保持するには十分な力が働くと想定しました。

 

ところで、これが水族館であるためには、ガラスが浮くだけでなく、そこに人が乗って下を覗けないといけません。そこで構造の専門家と一緒に解析をしてみました。
海に浮いた状況下での、ガラス厚と破壊時の荷重の関係を解析すると、ある薄さから、薄ければ薄いほど破壊時荷重が大きくなることがわかりました。この逆転現象は以下のように説明できます。
厚いガラス板の場合は板の曲げ剛性によって人の体重を支えるため、厚ければ厚いほど大きな体重を支えることができるのです。つまりこのとき浮力だけでなく、ガラスの面的な硬さに依存して体重を支えていることになります。

 

このガラス厚が、逆に0.5mm厚を下回ると、ガラスの面的な硬さがかなりなくなるので、その人が乗った部分だけが大きく変形し体が水中に沈み込むことで人が乗っている部分にだけ大きな浮力が発生し、人の体重のほとんどを水の浮力のみで負担できるようになるのです。
ガラスが薄いほど、つまりガラスの変形性能が大きいほど、ガラスは体重を負担せずに、浮力のみで体重と均衡する深さまで体を沈めることができるのです。

 

このグラフが解析結果です。薄さ0.4ミリぐらいを境に薄くなるほど破壊時加重が上がっていきます。現段階のシミュレーション解析では、体重56キログラムの人が乗っても0.1ミリ厚の薄膜ガラスが割れないという結果になりました。とてもゆっくりと乗る必要がありますが。

 

論理的には、こうして無事に人が乗れることが分かって、直径100メートルの天然水族館で海の下を泳ぐ生物たちを眺められるようになる。
いま体重56キログラムといいましたが、これにも多少条件がつきまして、もし、歩行しようとするなら、アールのついた、片足30センチ角程度の面積の特別な靴をはかないといけません。
そして、もし歩こうとするとその56キロを支える面積が一瞬ですが半分になってしまいます。
そこで単純計算すると56キログラムを2で割って、体重28キログラムの人、調べたところ大体10歳以下の子どもの平均体重がそれにあたりますが、そういう人がゆっくりと歩くなら割れないということも分かりまして、つまり、大人は乗れないと(笑)。素材の構造的特性がプログラムを規定してしまっています。

 

こういうことがわかったということと、こうしたアールのついた特殊な靴で入ってもらう、と(笑)。もちろん、大人の方でも高額な料金を払っていただき、四つん這いで進むなど絶対に立たないという厳しい条件付きなら入場できる、という設定も可能です。結果として、このパースで表現したような風景が海の表面から見られる、という提案です。

 

倉方 どうもありがとうございます。続いては増田さん、大坪さんのペアにプレゼン説明をしていただきます。

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