イベントレポート詳細Details of an event

第15回 AGC studioデザインフォーラム
U-30 Young Architect Japan. 開催記念対談イベント

2012年3月30日(金)
講演会/セミナー

2011年の秋、30歳以下の建築家を対象とした「U-30設計競技」が開催された。AGC studioでは優秀作品をモデルやパネルで展示している(2012年3月10日~5月31日)。そのコンペティションの入賞者たちと建築史家の倉方俊輔氏による記念トークイベントを開催し、ガラス建築の新しい可能性について話し合った。(文中敬称略)

 

倉方 みなさんこんにちは。1階のギャラリーで展示されていますように「ガラスの新しい可能性を探る」というテーマでコンペが開かれ、若手建築家たち7組が参加しています。最優秀賞は下のギャラリーで展示されている1作品、また2つの優秀賞はパネル展示されています。
今日は、その入賞者たちが、何をどう考えたか、またガラスの最先端と建築が今後どう関わっていくかを話し合ってみようと思います。
まず、進行役の私から自己紹介をいたします。
私は建築史家で、大阪市立大学で教鞭を執っています。このコンペの母体となった30歳以下の建築展「U-30」は例年、大阪で開催されており、その参加者たちがU -30のスピンオフ企画であるこのコンペにも参加するということになったわけです。私はもともと大阪のU-30と関わっていたので、ここにも関わることになった次第です。
とりあえず今日は前半部分で受賞者から作品についての発表をしていただき、後半でフリートークを行います。それではまず、最優秀賞の加藤さん、ヴィクトリアさんからお願いします。

 


加藤 ご紹介いただきました加藤比呂史です。

 

ヴィクトリア ヴィクトリア・ディーマーです。

 

加藤 現在、僕らはコペンハーゲンに拠点を構え、日本と行き来しながら活動をしています。
今日は、1階のギャラリーでご覧いただいたと思いますが、こういうものを作りました。
コンセプトを説明しますと、いま倉方さんが話されたように、「ガラスの可能性を広げるものを考えよう」とのテーマをいただき、正直なところ「何をやったらいいのか?」という思いがありました。
で、最初はこの模型のような案を考えました。森の木々の間にガラスを張っていって、部分的な内部をつくり、それを家にしてしまうというものです。そうすることで、森のいい部分とガラスのいい部分をそれぞれ掛け合わせられるのではないか、と考えました。
例えば、森は季節によって樹が繁ったり落葉したりして光の調整をしてくれる。
一方、ガラスは透明なもので雨風を遮ってくれます。そのうえで改めて考えなければいけないのは「ガラスとは何か?」という根本的な問題でした。
まず、少し調べてみると「ガラスは物質の名称というよりは状態を表している」ということがわかりました。確かに古いステンドグラスなどを見ると、下の方が垂れて見えるなどちょっと厚みが違っていたりする。ガラスは安定したものではなく、どこかドロッとしたもの、流動的な性質を持ちながらも固まっている、と感じたのです。
そういうガラスが森という自然と合わさったら何か新しい可能性が広がるように思えました。

 

これまでガラスは「板状で透明」と思っていたのですが、そうではない要素もあると思い、そういう部分を空間化していくとおもしろいと考えたのです。
建築の歴史的な観点からいうと、ガラスは「何もないもの」として扱われてきたように思います。
例えばスラブが2枚あって、柱があり、そこでは内部と外部を分けなければいけないので、本当は何も置きたくないのだけれど何かで遮る必要があり、「何もない」に一番近いガラスが使われた。ガラスが言いわけのように使われていると感じたのです。
しかし、これからの建築ではガラスが前面に出てきて、それ自体に存在感があると面白いのではないか、あるいは、今だとガラスはだいたい枠にはまっていますけれど、この枠が、もっと自由なものとして振る舞えたら面白いだろう、と考えたのです。

 

当初の提案では、森の中の架空の住宅として考えていたのですが、ギャラリーで展示するには、もう少し縮小して茶室のような2畳くらいの広さ、最小限の建築と呼べるようなものにしようと考え直しました。千利休の待庵と同じような大きさを想定したのです。
展示が決まり、実現に向けての過程を説明しますと、ここ3ヶ月くらい日本に滞在し、自分の体を動かしてつくってきました。
ギャラリーに設置するので、最初の「森の中にガラスをはめていく」というコンセプトが少し変わり、自然界そのものよりも、もう少し護られている場所ですから、庭的なものをイメージし、半分自然で半分はコントロールされているというイメージにしました。

で、出来上がったのが、下の階にあったこれ(画像)です。自然の中ではこんな間隔で木は立っていませんが、森をギュッと凝縮したようなかたちにしました。
プロセスとしては、最初にガラスを立ち上げていって、そこに木をはわせる、と考えたのですが、施工会社さんから「それだとかなり難しい」とアドバイスされ施工の手順を考え直しました。
まずはガラスの代わりにベニアを使って全体のフォルムをつくり、そこへ木をはわせていって、その後で1枚1枚ベニアをガラスへ取り替えていったのです。

 

この写真にあるように、工務店さんへ1ヶ月くらい通い詰めてノミやノコギリの使い方を教わりながらつくっていきました。
なお使用した木は山から切ってきました。僕の出身高校が山を持っていて、「昨年の台風で倒木がたくさん出たから、それを含め、使っていいよ」と言っていただけたからです。
工務店さんの作業場でも一緒に動いてくださったのは学生さんたちだったのですが、このように少しずつ作りながら「ここにガラスがはまるとどうなるのだろう」とイメージしつつ作業しました。
いったんその作業場でベニアタイプをつくってみた後、ここのギャラリーへ運んできました。それからガラスをはめたのです。

 

ガラスと木を留めているのはスチールの部材です。そして、せっかくなので当初イメージした茶会をしてみようということになって、先週お茶の先生をお招きして茶会を開きました。敷居が高いかと思っていたのですが、この写真のようにかなり多くの人々が立ち寄ってくださいました。
先ほども言いましたが、「森ではなく庭をつくるように」という狙いだったのですが体感的には木と木の間隔が近いのでワイルドな印象を受けます。
そもそも、ここはギャラリーであり、その外は非常に多くの人々が行き交う京橋の交差点で、ショールーム自体がそうですけれど、そこにモデル展示をしたので、ガラスと人のレイヤーが何重にも重なってきて、そういうガラスの映り込みを体験できるおもしろさを発見しました。



 

今回の提案から実施までの経験を通してガラスの可能性を考えてみました
比喩としてですが、そこに実体はないけれど、何かが見えたり、状態だけがあったりするという現象がガラスによって生み出される。そういう状態がガラスによって生じさせられる。
例えば、ここのギャラリーは時間によって、明るさや映り込みの状態が変わりますよね。人や街の状態が違って見えてくるわけです。そのように周りの環境によって透明度、反射などが変化するというガラスの特性を改めて気付かされた体験でした。

 

倉方 ありがとうございました。では次に海法さんお願いします。

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