イベントレポート詳細Details of an event

第12回 AGC studioデザインフォーラム
「開かれた環境と技術~LCCM住宅を中心に~」

2011年12月8日(木) 開催
講演会/セミナー

LCCM住宅のコンセプト

 

2011年の2月、建築研究所(茨城県つくば市)の構内にLCCM住宅のデモンストレーション棟が完成しました。

 

なぜ、いまLCCM住宅、ライフサイクルカーボンマイナス住宅なのかというと、ご存知のように低炭素社会への要求が背景にあります。建築は非常に資源・エネルギー消費的なものであり、例えば日本で排出されるCO2の三分の一は建築が発生源になっています。そこで、低炭素社会を実現する「住まい」および「住まい方」を探求する必要があります。

 

もちろん、これまでも国内外を問わず省エネ的なモデルハウスはたくさんつくられてきました。ただ、そのほとんどは、あくまでも運用時、竣工後の省エネや住んでいる際の排出CO2削減をテーマにしています。

 

一方、LCCM住宅というのは住宅に備えた太陽光発電パネルなどでエネルギーを生み出し、その余剰分で建設時と運用時に消費した分のエネルギー相当量を補い、最終的にはカーボンマイナスにするという考え方で、住宅のライフサイクル全体のバランスを見るものです。
もちろん、太陽光パネルなどの創エネルギー装置や高断熱の仕様を組み込んでいますので、建設時でのCO2排出量は一般の住宅に比べLCCM住宅のほうが少し高くなります。
模式図で比較するとこうなります。従来の住宅は建築時から右肩上がりにCO2排出量の累積が増大してゆき、改修時にも何度か段差のように排出量が増え、ずっと上がり続けます。

 

LCCM住宅

  

一方、LCCM住宅では建築時の排出量はやや多いものの、年数が経つごとに右下がりに排出量の累積がマイナスへ向かいます。数度の改修時にはちょっとずつプラス側へ戻るものの、全体としては下がり続け、最終的にはCO2排出量の累積が0ラインを超えマイナスになっていくわけです。

 

細かいところを見ていきますと、まず運用時の消費エネルギーや排出CO2を削減することについては、従来型の省エネ住宅と大きく変わりません。自然エネルギーを存分に生かすためにいわゆるパッシブデザインを採用します。その上で太陽光発電パネルや太陽熱給湯装置などを備えます。躯体は断熱設計をします。

 

さらにいえば、居住者の意識や行動にも省エネ的なふるまいを求めます。不要な冷暖房や照明を使わないのはもちろんルーバーの操作やカーテンの開け閉めなど住まい手の生活態度も省エネに寄与するよう求めます。

 

そして建設時にも当然、CO2排出を削減するような設計・施工を求めます。建材の選択やその輸送、現場での施工に関するエネルギーなども減らすわけです。

 

開かれた多層構造

 

実際に建築研究所に建てたデモンストレーション棟での事例について紹介します。

 

まず設計時に考えたのは、風や光、熱などの自然エネルギーを取り込み、また緩衝エリアを設置します。腰屋根や縁側などを設け、すだれ等の伝統的な技術も生かします。

 

2つめとして、さまざまなモードを組み込んだ、いわゆる「衣替えする住宅」にしました。

 

従来の省エネ住宅はどちらかというと北の地方で発達してきた、外に対してディフェンシブなものでしたが、寒い時期だけではなく、夏や中間期など地域や季節に対応可能なモードが必要と考えました。季節や気候に応じた多様なモードを1軒の家に組み込みます。当然、建設時も省資源、省エネに着目して素材や工法を検討します。

 

それから4つめのポイントとして空間性・デザイン性と環境性能の融合を目指します。環境を重視して設計していくと従来は、デザイン的に自由度が削がれる印象もありましたけれど、そうではなく、むしろ環境重視で設計することにより新しいデザインの可能性が生まれるというアプローチです。

 

また、省エネというと熱ばかりがフィーチャーされ、断熱材を厚くしてディフェンシブな構造になりがちですが、そうではなく、温熱環境、風環境、光環境をすべて両立させライフスタイルとの調和を図ります。

 

具体的には光や風をどう取り入れるかを考えるわけです。そして肝心なのが「住まい手の省CO2行動につなげる建築計画」とすることです。

 

先ほどもいいましたように、この計画は住まい手が参加してはじめて実現します。もちろん高効率な機器を組み込むことも考えています。

 

以上のような考えでLCCM住宅のコンセプトをつくりました。平面図を後でお見せしますが、まず、多層レイヤーによるストライプ状の平面構造にしてあります。いろいろなレイヤーを重ね合わせ、その組み合わせで季節に対応したモードをつくっていきます。

 

2つ目のコンセプトは「積層された断面構成」です。

 

また3つ目として「自然エネルギーによる可視化」というコンセプトです。実際にさまざまな大学のいろいろな専門家が集まって開発していますので、かなり綿密なシミュレーションを行い、それを基に設計しています。例えば、断熱性能を変えると、通年での熱負荷がどう変わるのか、と。それによって室内の温度差を検証しています。

 

また地域別の断熱性能もシミュレーションし、それぞれの地域に応じてヒートショックが起きないよう計算しています。給湯に関しては熱源の選択、配管の短縮、小口径化などの工夫をしています。

 

一方、光環境に関しては、まぶしすぎない環境を考えました。発光効率が良く耐用年数の長いLEDを採用し、そのうえで開口の位置などもシミュレーションしています。約140㎡の建物全体の照明をわずか400ワット強の電力ででまかなえています。

 

さらに、風環境、通風に関しては南面に大きな開口があり、大きなルーバーもあります。北側の屋根の上に塔状の通風口を突き出していますが、これがある場合とない場合をシミュレーションしました。もちろん、この土地の風の流れに合わせて設計しています。

 

30年でカーボンマイナスに

 

ここからは建設時のCO2に関するシミュレーションです。まずは計画案をつくり、その計画で排出されるであろうCO2を算出しました。それを受けて構法を見直しています。

 

まず、CO2を定着するのは木ですので、木造を考えました。国産材のほうが輸送にかかるエネルギーが少ないので、一見有利に見えますが、じつはそう単純ではないのです。木という建材に要するエネルギーの大半は乾燥にかかるエネルギーなのです。だから、国産か輸入かという選択ではなく、国内産であり、かつ木屑等のバイオマスで乾燥させているかが問題なわけです。そういう国産材を採用しました。

 

一方でコンクリートの排出CO2量は非常に大きくて、建物全体の1/3~1/4を使ってしまいます。そこで、できるだけ排出量の少ないコンクリートを用いてボリューム自体も減らし、ベタ基礎ではなく布基礎にしています

 

それからガラスもCO2を多く使う建材なのですが断熱性能が欲しいので真空のペアガラスを使っています。ただし、断熱材は極端に厚くしていません。

 

こうしてシミュレーションすると、建設時のイニシャルでCO2排出量は少し増えますが、30年でマイナスに転じ、何度かの改修メンテナンスを含めても、90年経つと50トンくらいのCO2貯蓄をできるという計算になります。それで、このような概要になりました。143㎡の木造在来構法です。次世代省エネ基準のⅡ地域相当ですので、極端に断熱性の高いものではありません。

 

また太陽光パネルは片屋根一面に8キロワット分搭載しています。通常の住宅では3~4キロワット程度なので、その倍くらいの面積が必要になっています。

 

平面図はこのように3層のストライプ状の空間構成です。南側にバッファゾーンとなる縁側空間があり、真ん中にリビングダイニングの活動ゾーンを配置し、北側には水回りや寝室等があります。これが断面図です。2階の子供部屋でも寝る場所は天井が低く、活動的なスペースは天井を高くしています。そしてこの北側ゾーンの中に2本の通風塔が屋根の上まで突き出ています。ここで空気の流れをつくります。

 

衣替えの部分では、通風や日射遮蔽、機械的な空調、蓄熱タイルなどを組み合わせて夏から冬まで6つのモードを使い分けられるようになっています。また照明は小さなものを多く必要なところへ配置するという「多灯分散照明」にしています。それがわずか計400ワットの照明で家全体をまかなえる形にするわけです。

 

なお、先ほどもいいましたように布基礎を採用し、しかも小さめの基礎にして建物を少し張り出させて乗せる形になっております。

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