イベントレポート詳細Details of an event

〈UIA連動企画〉 第10回 AGC studio デザインフォーラム
「デザインの新境地~Design’s New Frontiers」

2011年9月26日 開催
講演会/セミナー

【講演概要】

 

アントネリ氏は、近年MoMAで開催した企画展示の画像を中心に現代デザインとアートの最前線を紹介した。
ひとつは2008年に開催された企画展示で、生命科学とデザインのコラボについてである。かつてはデザイナーと科学者が一緒に仕事をする機会はほとんどなかったが、近年は非常な近接が進んでおり、例えば、「ナノ・デザイン」と呼ばれるフィールドではDNAレベルにまで及ぶ形やカラーリングが試されている。
また「ティッシュー・デザイン」では生体組織の研究や、組織を使った新しいデザイン制作が多様に取り組まれているという。さらに、「バイオ・ミミクリ」と呼ばれる生態模倣の分野では、例えば、動植物が荷重を支えるために合理的な方向へ成長する自然モデルを取り込むことにより、そのアルゴリズムでイスなどをデザインする試みも行われている。

 

そのように自然のモデルから学び、そのデザインやプロセスをまねて人間社会に適用させる技術は、科学者とデザイナー双方の協力がないと実現しない。

 

また「TOLK TO ME」と題されたMoMAの企画展示の事例からはコミュニケーションを中心にデザインの可能性が示された。例えば、ALS(筋萎縮性側索硬化症/筋肉の萎縮と筋力低下をきたす神経変成疾患で、人によっては眼球しか動かせなくなる)を発症したデザイナーが、手足の機能や言語を失っても目の動きだけでデザインできることや、またアリの視野を体験できる子ども用遊具、呼気の匂いで女性が妊娠しているかどうかを嗅ぎ分けられる蜂を使ったコミュニケーション・ポッド、女性の生理を男性が追体験できる装置、などといった先鋭的な手法・装置・試みなどが紹介された。

講演の様子 

講演後の意見交換では、そうした流れについての考察と、デザインの役割について話し合われた。とくに東日本大震災と原発事故を受けて、科学との距離感や、デザインは問題提起だけでなく問題解決に寄与できるかどうかという深い設問もなされた。

 

なお、アントネリ氏は「MoMAで仕事することの面白さ」について「MoMAのオーディエンスの中心層はデザインやアートのプロフェッショナルたちではなく、マチスやピカソを観にくる一般の人たちで、その普通の感覚で批評してもらえるのがいい」と語った。
また、そういう点で「子どもたちがもっともタフなオーディエンスであり、彼らが心から楽しんでいるか、何かを感じ取っているかを非常に気にかけている」とも話していた。