イベントレポート詳細Details of an event

第5回AGC studioデザインフォーラム
「大震災によって非構造部材はどう壊れたか ─地震とガラス」

2011年5月24日(火) 開催
講演会/セミナー

非構造部材の地震被害

 

壁や天井、窓など、いわゆる非構造部材の地震被害が注目されたのは1987年の伊豆大島近海地震の時からです。また同じ年に宮城県沖地震も起こり、コンクリートパネルが落下して車を潰すというような衝撃的な事故が起きました。
地震で構造部材が深刻なダメージを受けると建物自体が壊れたり、人が亡くなったりする一方、非構造部材の地震被害は、その頃までたいしたことがないと思われていました。
機能保全という意味では重要ですが、構造体が壊れるよりはマシと考えられてきました。しかし、今回の震災では、例えば天井が崩落するなど非構造部材の被害が非常に危険な事態を招いています

 

ガラスに限定しますと、以前、福岡のビルで400枚くらいのガラスが割れた事例がありました。これはすべてはめ殺しのパテ留めガラスでした。同じような設計・施工をしたビルはいまも非常にたくさんあります。
阪神淡路大震災の時も、大阪では何万枚ものガラスが割れて交換されています。それほど多く破壊されたのですが、あの時はみんな神戸に目が行っていて、大阪のガラスの被害はほとんどフォローされていません。被害報告こそ少ないものの、じつは阪神淡路の例ではガラスの崩落が冷汗ものだったのです。
そして、天井の被害が直目されるようになったのは、2005年に仙台のプールで落ちた例です。さらに今回の地震では九段会館の天井崩落で亡くなられた人まで出てしまった。今後、かなり深い検討が行われると思います。

 

このように非構造部材が地震で壊れるのは、主として層間変位に追従できなくて壊れるものが多いと思われます。
この画像は阪神淡路大震災の時の被害ですが、カーテンウォールでも層間変位が原因で割れています。この建物の残留変形が最大80分の1という層間変位でしたから、割れて当然と思います。設計上の問題ですが、こういうガラスの突きつけのコーナーなどはこれまでも多く割れています。
また、PCカーテンウォールは脱落するという例が阪神淡路のケースでもありまして、脱落しないまでも脱落寸前でズレたりして、内部から確認しますとこの写真のように内側のコンクリート部分が破損しているわけです。これは放っておくと落ちますよね。
それから中越地震の時から着目されているのが、ラスシートという、ALCが普及する前の昭和30年代頃の鉄骨造の外壁で、このラスシートが今回の震災でも非常に多く落ちています。中越のときに余震でこれが脱落して人が亡くなっている。
一方、ALCは1987年の宮城県沖地震の頃から「よく落ちる」と言われ、今回もそれなりに落ちています。ただ、地震の規模を考えると、それほど落ちていないとも言え、微妙なところです。

 

ここで、非構造部材の力学的な考え方だけを簡単に紹介しますと、基本的に慣性力に対する安全性と層間変位に対する安全性の2つがあります。慣性力を気にしなければならないのは、外壁ではプレキャストコンクリートくらいです。
ただし、室内になりますと、例えばこのAGCスタジオのガラスの間仕切りは、変形と慣性力がきいてきますので、そのチェックが必要です。基本的に、非構造部材が気にするべきは層間変位であります。
ガラスの場合は回転してもギリギリで割れないのが、どのくらいの変位だろう、と計算するのが基本的な考え方です。そうした考え方に対して実際の耐震基準の内容をみますと、公共建築協会の標準仕様書を使うことが多いと思いますが、それに付随する建築工事監理指針に非構造部材の耐震グレードが書いてあります。
その一方で、非構造部材の耐震設計施工指針というのも出ておりまして、これがいま、非構造部材に対する耐震基準の出発点になっています。ただ、今回、これほどの被害が出ていますので、これも改定する必要が生じるかもしれません。

 

これらの基準には変遷がありまして、1987年の宮城県沖地震を受けて建設省告示109号というのが出され、これがいまだに生きています。もし今回の被害を受け基準を改定するなら109号を強化することになるかもしれません。
また、それに伴って帳壁耐震マニュアルというのもありまして、そこにガラスやラスモルタルも含まれています。告示自体は改定しませんでしたが、阪神淡路大震災の後にマニュアルだけを改定して「外装工法耐震マニュアル」というところに窓ガラスなどが入っています。この時にガラススクリーンも追加されたのです。
カーテンウォールには明確なグレード設定がなされておりますが、その他のもの、とくに天井などは決定的な耐震性向上の手法がないというのが実情です。今回の震災を受けて、このあたりも見直す可能性があると思います。

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