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第4回AGC studioデザインフォーラム
「環境建築の3要素を確立させたい ─自然エネルギー利用とソーラー建築デザイン」

2011年4月22日(金) 開催
講演会/セミナー

プロローグ
東日本大震災では自然の巨大な力を痛感させられました。近代建築の技術で作られた建物や防波堤が、あっという間に壊されてしまうというのは本当にショックです。
自然エネルギーというのは、そうした自然に寄り添って生きる考え方で、一方、20世紀のテクノロジーや近代建築の特徴として、自然に対抗して生きるというスタンスがあったと思います。私たちはそれを手助け、あるいは牽引してきたとも言えるのですが、その反省を含めて、このままではいけないと感じる次第です



 

低炭素社会実現は建築界のミッション

 

さて、私どもは「環境の日本設計」と呼ばれていますが、建物を建てるだけでなく、さまざまな知恵やノウハウを蓄積しています。
3年前に設立した環境創造マネジメントセンターは低炭素社会を築くための、これまでの設計事務所とは違ったベクトルを持ちたいと考えています。従来の環境設計や従来の街づくり、家づくりとは異なる「低炭素社会」を設計するための組織です。

 

地球温暖化の現状と我々の責任を考えると、建築はもちろん都市全体もエネルギー消費を抑えなければなりません。快適さを追求するあまりエネルギーを使い放題なんてことはできないのです。
2006年にCO2(の排出量)が12%も増加しました。ところが3年後には減っています。これはいろいろな努力もありますが、リーマンショックの影響が大きかったのです。経済活動や生産活動が疲弊、停滞したのです。
一方、業務部門、つまりオフィスや家庭では排出量は増えています。近年の私たちは地球が温暖化しないように暮らしているつもりかもしれませんが、じつは生活の中で温暖化に手を貸しています。
それで、私たちの設計業務によって、どれだけCO2(の排出量)が削減されたのかということを、数値化しなければなりません。先進諸国では2020年までに25%削減、2050年には80%削減という目標を設定しています。
建築業界でも学会を中心にアクションプランを練っていますが、世界各国で最も削減の可能性が高いのが家庭部門や業務部門と言われています。ビルや建物は「ゼロエミッション」でなければいけないとされ、住宅ではさらに(自然エネルギーを)プラスにしないといけない。技術的には、それは可能なのです。
それらをしっかりと具現化するのが私たちのミッションだろうと思います。

 

建築設計を行う立場からいうと、低炭素時代になった時は、環境設備のエンジニアと建築がきちんとコラボレートしないと本物の建築にならないという気がします。もはや化石燃料を使ってはいけないと仮定すると、建物の屋根や外構などはすべてエネルギーを作る装置だと考えていいでしょう。
また、そうするべきで、建物は外界を遮断するシェルターとしての建築ではなく、外部環境と”こうしん(?)”するようなものを考えないといけません。
つまり、屋根に必要な機能は防水だけではなくなってきますし、その下に居る私たちも生活の仕方を考え直す必要があるのです。

 

“スマート”な街と建物

 

最近、スマートシティという言葉を聞きますよね。その都市構造は総体として低炭素化され、生活や業務に必要な機能が集約化、コンパクト化され、それによってインフラの負荷も軽減される。周辺の緑化によるヒートアイランドの防止や、市民のライフスタイルとしてムダを省く。そういうことが挙げられています。
ヒートアイランド現象という問題もありますが、東京は低炭素という点で最先端な都市ですよね。
欧米でもそうした低炭素化された都市への動きがあり、この画像はオーストリアのソーラーシティです。地域分散型エネルギーの街です。 屋根には当たり前のように太陽熱温水器が乗っています。街は景観も重要ですから、きちんとデザインされなければなりません。このソーラーシティも有名なドイツ人建築家たちを中心にしてまとめられた街です。

 

この画像はアブダビ空港のすぐそばにあるマスダールという人口5万人規模の建設中の街です。2007年に着工されています。
中東では石油を採掘できますが、いずれ出なくなるので、砂漠に降る太陽エネルギーだけで都市を造ろうという壮大な実験です。いまは砂漠に太陽電池(パネル)を埋めている段階です。
また、水がないので海水を引き込んで淡水化し、それを貯めておくタンクが必要になりますので、そのタンクの上に太陽電池パネルを付けています。その電気で淡水化された水は、畑や緑化に使い地域全体の砂漠化を防ぐ目的もあります。そういうことをしながら建物を建てています。
そして、太陽光から得られた電力を使ってさらに太陽電池パネルを作るための工場を建てようとしています。その工場で作られた太陽光パネルをまた別の場所へ運び、同じような都市を造るという構想です。そうしたアメーバーのように増殖する都市が計画されているのです。従来の化石燃料を使った都市のあり方とはまったく違う考え方です。

 

またロンドンでもこうしたゼロエネルギー住宅がすでにできています。高気密、高断熱で、パッシブソーラーシステムにして、森林資源を使ったバイオテクノロジーで冷暖房をしています。
私も見学に行ったところ、この写真のように人も太陽電池を背負っているのです。背中に背負っているので、この人は常に北へ向かって歩き続けているのかといえば、そうではなく、南へ歩く時は、体の前にパネルを抱える格好になります(笑)。

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