イベントレポート詳細Details of an event

第3回AGC studioデザインフォーラム
「主張するガラスと光」

2011年2月24日 開催
講演会/セミナー

橋本 僕はインテリアのデザインだけではなく建築やグラフィックのデザインもしております。デザインをする上でエクステリアとかインテリアといった概念を分けて考えるようなことはしません。
よく知られる代表的な物件としては、数年前にオープンしたホテル「ザ・ペニンシュラ東京」があります。
武石さんとはよくコラボレートして仕事をさせていただいていますが、空間にとって光は非常に大切というか、光そのものもひとつの素材ではないかと考えているくらいです。ですから、初期のコンセプトの段階から武石さんと相談させていただくことが多いのです。

 

武石 照明デザインをしている武石です。
インテリアや建築の空間というのは、用途を限定するために作られています。例えば、レストランのインテリアデザインだったら、食事をすることに特化したデザインになりますよね。
照明というのは壁を照らすこともできるのですが、人と一緒にいるのが、人と寄り添っているのが、照明だと思います。いろいろなシーンでどう過ごせばいいかを光の側から考え、提案するのが照明の役割と考えていますので、今日は、橋本さんと一緒に仕事をさせていただいた作品を見ながら、それを話したいと思います。
橋本さん、今日のタイトルは「あたたかな透明感」となっていますね。

 

橋本 ガラスにしてもアクリルにしても、透明な素材はどちらかというと硬質でクールなイメージがありますけれど、そうした一面的な観点だけでなく、もっと人間的な温かさとか、静ではなく動であるとか、多面的な見方をできると感じています。
最初にお見せするこの画像は、まだ竣工直後の物件です。神楽坂にある個室を中心としたバーです。この部屋の場合はテーマを「科学と実験」に設定しました。理科の授業でワクワクしたような、ピュアな感動を表現したいと作ったわけです。

 

武石 僕らは一緒に仕事をする際に、概念的なことを話すだけでなく、具体的な素材を持ち寄って相談することもありますよね。ここでは「偏光」をテーマに入れて、偏光アクリルや偏光シートを通して反射させたりするなどの空間設計をしました。

 

橋本 このような空間こそ、インテリアデザイナーと照明デザイナーがコラボレーションする意義があると思いますね。
偏光アクリルだけでは面白い空間にならないのですが、ここでは壁や天井にもそれを埋め込み、そこへ光を与えることによりさまざまな効果が出ます。こういうアイデアは普段から武石さんが温めていたものですね。

 

武石 ええ。ガラスとアクリルは違う素材ですが、例えばガラスを使うときは、仕切りたいのだけれども本当は何もなかったことにしたいとか、透明性を生かすならそういう意図だと思うのです。それに対して、ガラスやアクリルがもつ反射、偏光、屈折など別の機能を出していくと新しい空間が生まれるような気がします。

 

橋本 この部屋はいたってシンプルなつくりだから、こうした素材を使うと硬質なイメージになりそうなので、壁はソフトに、すべて布を使いました。いわゆる「布団張り」で、触ると柔らかい素材にしています。
一方、次の画像の部屋では、カレードスコープがテーマです。ステンレスの鏡面を壁や天井、テーブルにも埋め込んで、万華鏡のように見えるという仕掛けです。これもほとんどが武石さんのアイデアです。

 

武石 ガラスの透明性を生かす、というのとはまったく逆の「全反射」というものです。
じつはミラーは光にとって非常に難しい素材です。すべて跳ね返ってきてしまいます。それを使って何かをしたいということで橋本さんと話し合い、こういう空間が生まれました。

 

橋本 次は、同じバーのもうひとつの部屋なのですが、ここでは透明性をテーマにしています。切り絵のような三角形の穴をカーテンにたくさん空け、そこに光を当てると木漏れ陽のような光が来たりとか、奥の素材が見えたりして、奥行きのある空間を作っています。

 

武石 昔、京都の蔵の中で同じようなトライをしたことがありましたね。

 

橋本 少し話がそれますけれど、インテリアにしても住宅の設計をするにしても、最初は、ほとんど構造のことを考えないですね。まず、こんな空間がいいのではないかとか、こういう暮らし方がいいのではないか、というところから、「より良い空間は何か?」から入る。最初から木造にしようとか、鉄骨にしようなどとは考えないですね。
デザインの入り口は、なるべく縛られず自由なイメージから入って、徐々に具現化するような進め方をします。

 

武石 橋本さんのデザインは、例えばレストランであれば食卓から考えて全体へ行くという印象です。普通は大きなフレームを組んで、そこから細分化していくのですが、橋本さんは逆に「食べる」「飲む」「くつろぐ」などといった人間の行為を膨らませて、それを店や住宅などの全体へ波及させるという進め方だと感じています。

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