イベントレポート詳細Details of an event

第2回AGC studioデザインフォーラム
「究極の部品化住宅、サスティナブル住宅を求めて」

2011年1月28日(金) 開催
講演会/セミナー

ヒートブリッジ出現

 

私は木造でも鉄骨でもかなり熱のことを考えて箱の家を造ってきたつもりです。
それぞれの施主さんたちから各家の電気代を教えてもらい、面積当たりのエネルギー費を算出・確認してきました。そして、鉄骨造は木造に比べ2割ほど電気代が高く出ていました。
鉄骨造のいいところは、その骨組みやシステムをすべて見せるところ。それが楽しいのですね。
ポンピドーセンターから始まり80年代のハイテク系と呼ばれたデザインの流行がありましたけれど、あのような骨組みをさらすデザインは、今、まったくありませんよね。そのほとんどが巨大なヒートブリッジになるからです。
私も、かなり気を使っていましたが、鉄骨造の8つ目の家で、結露が報告され、いったん鉄骨のシリーズをやめにすることにしたのです。
そうこうしているうちに、通産省NEDOのプロジェクトとして「アルミで箱の家を作ってみたら」という呼びかけがあったわけです。
ご存じのようにアルミは鉄なんかよりも熱伝導率が高い。軽くて工業化や標準化をしやすい、乾式工法にしやすいという利点はありますけれど、エネルギー的には大きな欠点を抱えているのです。
現実に過去の有名建築家たちもアルミ住宅にトライしており、その全てが熱の課題で失敗しています。私自身も鉄骨造でよく学んでいましたから「今度は絶対にヒートブリッジのないものを目指そう」と自分に課しました。これがその実験棟の写真です。
骨組みはもちろん、外壁や内装まで徹底的にアルミで作っています。アルミでどこまでできるか、いろいろな試みをしました。柱、梁はもちろん、キッチン周りや照明、ダクト、椅子などもそうですし、天井もハニカムパネルをそのまま仕上げにして、どうしても難しい床材は、木とペットボトルの廃チップを、アルミ製造の技術でもある「押し出し」で作っています。
もちろん骨組みはすべて断熱パネルで包み込んでありますし、取り付け金具もヒートブリッジにならないよう考えてあります。これはものすごく性能のいい家です。相当な省エネ住宅になっています
軽量な乾式工法ですから、解体して別の場所へ運び、簡単な基礎工事をするだけで再構築してもまったく問題がありません。
アルマイト仕上げという化学的にはボーキサイトと同じ酸化アルミニウムですから非常に安定した、劣化しにくい状態で使えるわけです。
ただし、ここにアルミの問題点もあります。アルミの製造工程では非常にたくさんのエネルギーを使いますので、サスティナブルではありません
もちろん、いったん精製してしまったもののリサイクルは容易ですから、リサイクル部分だけを見ると低エミッションといえるのですが、乾式の再構築可能性などを考えると、アルミの家には時間という概念がないのです。だからアルミの家が本当にサスティナブルかといえば矛盾を孕んでいるかもしれません。アルミの家は実験棟だけでなく、箱の家として実際の住まいも手掛けましたが、現在はほとんど展開していません。
その可能性を認めつつも高コストの問題をクリアできないと、普及は難しいと感じています。

 

風の制御とサスティナブル性

 

そのように木造や鉄骨、アルミといった流れで熱エネルギーの問題を本格的に詰めてきまして、コンクリートでも試してみたのが、箱の家の48です
これは1階部分が外断熱の打ち込みパネルで造り、水周りとガレージを配置しました。2階の一室空間は木造ですが、LVLを使うなど新しい工法を試しています。2階の床は水で蓄熱するタイプの床暖房を敷き込み、屋根にも植栽を施すなど、その時に可能だったエコ技術を全部盛り込んであります。そして、その箱の家でどのような室内熱環境ができるかを測定しました。
竣工の9月終わりから2月頃までを計測したグラフがこれです。下の折れ線が外気温で正月の頃が最低を記録しています。5℃くらいですかね。
一方、その上の折れ線が天井と壁の温度で、多少外気温の影響を受けていますが、ほとんど安定しています。そして一番上の23℃~24℃くらいに安定しているラインが2階床付近の気温です。もう、外気温とまったく関連していません。この家で技術的には常に安定した熱環境を省エネで実現できることを確認できました。「熱に対する結論が出たな」と思いました。
これは坪単価で48万円~50万円程度です。
現在は東大の環境学の研究者に、箱の家の室内環境を全部調べてもらっています。100番くらいから後のシリーズに関して、例えば空間の気密性や温度分布とか、空気の流れ等を詳細に調べ、大きな1室空間でも天井扇を付けるだけで冬の温度分布がかなり改善されることなどがわかってきました。そうしたフィードバックをできるようになっています。
一方、ご存知のようにMUJIでも「箱の家」の流れを汲む工業化住宅のプロジェクトに関わりました。
私たち建築家はフレーム、床、壁、屋根などシェルターだけを設計し、インテリア等は施主さんが無印良品で編集するというものです。
それを含め、ここまでの一連の流れを振り返ると、「箱の家」は建築の部品化や標準化、工業化、そしてサスティナブル性を体現する住宅といえます。実際、専門誌でもそのような位置づけで紹介されたり、ニューヨークのMOMA美術館で開催されたハウスデリバリーの展覧会でも取り上げていただきました。
建築の部品化はけっこう歴史があって、日本では剣持れいさんや、大野勝彦さんのセキスイハイムもそうですし、世界的に見ても産業革命の頃から取り組まれています。当初は、イギリスの住宅をオーストラリアやニュージランドへ運ぶなんていう目的もあったわけです。

その後、サスティナブルデザインのひとつのかたちとして、デベロッパーさんと「ココラボ環境共生住宅」というのを開発しました。
それまでに熱の問題はなんとかなると結論が出ていましたので、「最後は風だな」と考え、それに取り組んだわけです。
僕は職住近接のサスティナブル住宅として自邸を箱の家にしています。そこで確認できたのは、夏は空調なしでも、いろんな工夫で室温28℃くらいまで下げられるということです。この28℃というのは微妙な気温で、ちょっと風さえ吹けば、もう過ごせるのですね。だから風が大切なんです。そこで風のシミュレーションや風洞実験等も行っています。
冬は大きな南面のガラスで輻射熱をもらい、夏は深い廂が光と熱をカットしてくれる。風を上手に通して、蓄熱の床暖房と合わせ、熱を逃がしたり温度分布を最適化したりする。今、風が僕のテーマです。

また近年は天然素材といっても工業化・製品化された自然素材が使われるようになってきています。これらはきちんと計算できるので、そうした建材の部品化をすすめ、ある種”ロマンチック”な使い方ではないサスティナブル建築を追求したいと考えています。

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