イベントレポート詳細Details of an event

第2回AGC studioデザインフォーラム
「究極の部品化住宅、サスティナブル住宅を求めて」

2011年1月28日(金) 開催
講演会/セミナー

一室空間と社会や家族関係

 

ところで、箱の家のような一室空間は、戦後の一時期にもありました。
例えば、僕の師匠である建築家の池辺陽も有名な「立体最小限住宅」という一室空間の家を作っています。家族4人が住むための15坪しかない家ですが非常に機能的な住まいです。
それまでは大家族制度の下、農家などはいわゆる田の字型プランの家に、また都会でも3世代が一緒に暮らしていたのに対し、戦後、アメリカに倣った核家族制度で社会を作ろうとした結果、こうした一室空間が出てきます。当時の核家族制度に対する前向きな姿勢の反映でしょう。
それから40年、50年を経てまた一室空間が復活してきている。この間、ハウスメーカーやディベロッパーによる「nDLK」住宅という住まいを個室へ細分化していく時代がありましたけれど、なぜそうしたプランニング手法が戦後と現在の一室空間プランニングの間に挟まっているのか、と考えてみました。まぁ、戦後モダニズムというのは拡張性の解体であり、民主的な家族を作るために壁を取り払いましょう、となったわけです。
一方、高度成長期は個の自立へ向け個室へと分化してきたのですけれど、後になってさまざまな社会問題が生じてきた。
例えば引きこもりやニートは極端な例だとしても、家族であるのに、リビングを通らず個室へ直行し、みんな自室に閉じこもってしまうとか、離婚率が高くなるなど、住い方や住宅と深く関わる社会問題が出てきた。
そうやって振り返ると、戦後の一室空間は「積極的な解放」だったのに対し現在の一室空間は、細分化に対する抵抗というか、「どうすれば家族をやっていけるか」という潜在意識があると思います。
ちなみに一室空間の住宅では、住い方を家族で話し合わないと住めません。仲の良い家族はより仲良くなり、一方、仲の悪い家族は仲がいっそう悪くなる可能性があるので、箱の家は仲の良い家族でないと提案できないのです。
実際に当初、箱の家を求められた施主さんたちは、ほとんど仲の良い家族の方々でした。最近は、それに加え「どのように家族をやっていいのか分からないので、とりあえず一室空間にしよう」という方々もおられます。いずれにせよ、家族が話し合わないと住めないという住い方の提案が、箱の家の第3層にあるわけです。そうした一室空間の最初の箱の家を第4層から見ると、9メートル角の形になります。
高さは夏至の太陽角度から算定して4.5メートルと、低く抑えられています。同じ建坪の場合、正方形にすると最も外壁の面積が少なくなりますよね。つまり、材料が少なくて済むし、熱負荷やエネルギー効率も最適化できる。動線も短い。そういう、すべてがギュッと詰まった結晶みたいなものになっているわけです。
先の家族や社会の問題に加え、近年はサスティナブル性も非常に求められているので、箱の家はその条件に適っています。そのように初期の頃は木造を中心に、建築費でいうと1500万円程度のタイプや、2000万円程度のもの、そして2世帯家族向けの2500万円のシリーズなど3グループの箱の家を作りました。

 

一方で、特殊な条件では鉄骨造にも取り組んできました。
鉄骨のほうが木造よりも部品化率を高くしやすいという利点があります。例えば箱の家3は、2階にビリヤード台を置くことになり、北側斜線の制限もあって幅7.2メートルのヴォールト屋根にしました。内側からその鉄の骨組みが全部見えます。鉄骨部材は全部工場で作りました。
またこの写真は箱の家の7番で、敷地が25坪くらいしかないのですが、お子さんが6人いて半ヴォールトの3階部分を子どもたちの一室にしています。21帖ですから1人当たり3帖程度の配分になり、個室など無理です。
それで、6年後に訪ねて行ったら、この写真のようになっていて、たいへん感激しました。一番年長の子がリーダーとなって兄弟姉妹同士で話し合い、ベッドや家具、本棚、カーテンなどで各人の6つのコーナーが自主的に作られていたのです。

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