イベントレポート詳細Details of an event

第2回AGC studioデザインフォーラム
「究極の部品化住宅、サスティナブル住宅を求めて」

2011年1月28日(金) 開催
講演会/セミナー

“箱”誕生の理由は低予算

 

この、最初の箱の家を設計したのは40代の後半でしたから、建築家としての自分のスタンスはほぼ確立されており、どういう空間を作るにせよ大体私が設計する戸建て住宅は坪単価で75万円くらいになっていました。
通常は、施主さんのところへ何度も通って相手を深く知り、時には酒盃も交わし、ミーティングを重ねて嗜好や要望を聞き出していく。そうやって作っていくと結果的に坪75万円くらいのプランになってしまうのです。
ところが、箱の家1号に関しては坪49万円ほどでできました。最初の面談時に予算がそれだけしかないと言われたのですが、私は自分から断ることをしないので、「どうしたらその予算でできるだろうか?」と考え、翌日すぐその敷地を見に行き、1週間程度で図面や仕様、概算見積もりまで出したのです。
通常のやり方だと予算オーバーするのが明白でしたので、あえて敷地と家族構成、コスト(予算)だけを聞くにとどめ、プランを練りました。だから、そこには施主さんの要望というよりは、僕の住宅に対するピュアなコンセプトや住まい観、住体験が込められています。
後で聞いたら、当初「あんな家には絶対に住みたくない!」と施主さん家族で私の箱のプランが大騒ぎになったようですが、それから複数の建築家のところを回られて、その間、たくさん勉強もなさり、結局「この予算だとこれしかない」と認めていただいたのです。
その施主さんがいなければ、ひょっとすると箱の家は世に出なかった。ただし、発表した直後から数十件もの問い合せが来たので、箱の家に対するニーズや時代性というものが潜んでいたのだと思います。

 

最初の箱の家で低コストを実現できた要因のひとつは、第1層の素材に関わる部分です。
骨組みは米松の構造材で、3種類くらいのサイズに限定、標準化しました。またガリバリウム鋼鈑やラムダの外壁にして、内装は作り付けの家具なども含めてシナベニアにし、床暖房を備えながらも建築費全体で1900万円程度に抑えられています。
そして第2層ではまさしく「箱の家」が環境制御装置であるということを体現しています。図にあるこのラインが夏至の太陽光で、こちらが冬至の太陽光の角度を示します。
奥行き1間の深い廂により、夏の直射日光は室内へ入りません。一方、冬はキッチンまで直射が通る。吹き抜けのある一室空間だからこそ光が入り、風も抜けて行く。ガラスは、このように南面に集中させ、北側には通風用の窓があるくらいです。冬の熱負荷を考えると、こうなりました。
ただし、一般的な住宅と比べてもガラスの総使用量は変わらないと思います。局所的に使っているだけです。
ちなみに冷房はありませんが、夏はそれでも過ごせる環境になっています。外壁や屋根の輻射熱を通気で逃がすような仕組みとし、結露しないよう対策もしっかり組み込んであります。
また第3層のプランニングに関していうと、寝室とトイレ、浴室だけは閉じた空間にしていますが、あとは全部、壁のないオープンな一室空間です。お子さんが3人いらっしゃいますが、2階の子ども室も仕切らず、女の子のコーナーだけカーテンで仕切られるようにしました。

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