イベントレポート詳細Details of an event

第2回AGC studioデザインフォーラム
「究極の部品化住宅、サスティナブル住宅を求めて」

2011年1月28日(金) 開催
講演会/セミナー

建築の4層と「箱の家」

 

私が1995年から手掛けてきた「箱の家」は現在110棟を超えましたけれど、最初の図面を描いた時、こういうシリーズに発展するとは思わずに提案をした経緯があります。
今日は、その「箱の家」について話しますが、その前に、私の建築観、これは東大の学生に教えていたときもそうなのですが、建築に対する私の基本的な考え方に触れておかなければなりません。

 

表に示すように建築は4つの層によってとらえることができると考えています。
第1層は「物理的なモノ」であるということ。また建築は熱や光、音、空気などを通したり遮断したりする「エネルギーの制御装置」でもあり、それが第2層にあたります。第3層は「機能」のことで、用途とか、動線がどうなっているかなど主にプランニングとして表れます。
一方、空間や形態としてどうであるか、総合的にその建物の「記号」や「意味」がどうであるかという第4層としての視点もあります。
これらは、それぞれが独立したパラメータでありながらすべて重なり合って存在しています。
例えばガラスは物理的なモノ(第1層)に過ぎませんが、光や熱、空気をコントロールする道具(第2層)でもあります。そのガラスを、寝室の場合はあまり使わず、光に対して閉じた空間をプランしたり(第3層)、一方では南面に大きなガラスを配置した家々が街並みや都市空間を形成する(第4層)など、4つの層すべてが建築全体に関わってきます。
「箱の家」のコンセプトも、こうした4層構造と密接に関連し、理論と実務が交差しながら構築されてきたわけです。

 

第1層の物理的側面から見ると、「箱の家」は構法の標準化によって性能とコストの最適化を図っています。単純な箱にすることによって、材料が少なくなり、構造も簡素になる。
また第2層では、風や太陽光など自然のエネルギーを取り入れてコントロールし、省エネを図っています。
第3層は住い方の提案であり、ここに箱の家の決定的な要素が込められています。つまり、できる限り壁を取り払い、外部に対して開き、内部にも開くという提案です。言葉を替えるなら、家は社会に開くし、家族にも開く。その分、見方よってはある種のプライバシーが制限される局面も生じます。
第4層はそれらすべてをインテグレートするためのかたちの問題です。できるだけ単純な”箱”にしてシンプルな街並を形成するという意味です。これは技術力が高い日本の大工さんや建築職人さんたち、凝った複雑性への指向とか、統一感を欠いた街づくりへのアンチテーゼでもあります。

 

さて、この写真が最初の「箱の家」の外観です。つい最近メンテナンスをしました。
シナ合板に防腐剤を塗っただけだった廂下の外壁をフレキシブルボードへ変更したり、大きな南向きのガラスをペア仕様にしたりするなど新たに手を入れました。でも骨組みはもちろん、ガリバリウム鋼鈑の屋根やラムダの外壁などは16年経ってもまったく問題ありませんでした。

 

一方、内部から撮った写真を見てもらえば分かりますが、このように道路から家の中が丸見えなんですね。南面の大開口の向こうは、通学路で車の往来は少ないのですが、一目にはプライバシーがないように思えます。
実際、このリビングに座って外を見ていると、外を歩く大人たちはほとんど顔を背けて、中を見ないようにして通って行きます(笑)。
一方、子どもたちは興味を示します。私は、それがすごくいいと思う。
箱の家は、大人のためというよりも子どものために作っている側面もあって、子どもたちがこうした物理的、精神的に開かれた空間で育ち、空間に対するセンシティヴィティを学んでくれればと思っています。もちろん、カーテンさえ閉めればプライバシーは守られます。

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