デザインフォーラムレポート

第67回 「新しい建築の楽しさ2015」展 連動企画④「文化を再編集する」(1)

df67_nakazaki.jpg中崎 隆司氏
(建築ジャーナリスト、生活環境プロデューサー)

中崎 みなさんこんばんは、司会進行を担当する中崎です。今日のプログラムは、まず、畝森泰行さん、弥田俊男さん、永山祐子さんの順で、建築家の方々からギャラリーで展示しているそれぞれのプロジェクトについて発表をしていただきます。その後、「文化を再編集する」というテーマでトークセッションを行う予定です。では、さっそく、畝森さんからお願いします。

df67_unemori_2.jpg畝森 泰行氏
(畝森泰行建築設計事務所)

「須賀川市 市民交流センター」
(福島県須賀川市)

df67_p1_1.jpg 畝森 畝森です。今回、僕は福島県須賀川市に建つ市民交流センターの模型を展示しています。約1万4000㎡の施設を組織設計事務所の石本建築事務所と共同で設計しており、この4月に着工する予定で進めています。このプロジェクトは東日本大震災の復興事業にあたり、もともとこの敷地にあった総合福祉センターが被災し、その跡地に図書館や公民館、子育て支援、市民活動支援などの機能をもつ複合施設をつくることになりました。これだけ大きな規模の建物なので通常は実績のある組織事務所や大きな設計事務所しかプロポーザルに応募できないのですが、今回は僕のような40歳以下の建築家と組むことが求められた全国的にもおそらく初めての試みでした。そういった要件が盛り込まれたのは、単なる建て替え・復旧という視点ではない市が掲げる「創造的復興」に向け、新しく柔軟な発想力が設計者に期待されたからです。

 須賀川市は福島県の中通り、郡山市の隣に位置します。東日本大震災では沿岸部の被害に注目が集まりましたが、内陸部でも被害は大きく、また放射線の影響もあって震災直後は子どもたちが屋外で遊ぶことができない状況でした。震度6強の地震が起こり1万5000戸以上の家屋が被災、市庁舎や総合福祉センターが使用不能になり、さらにダムが決壊し亡くなられた方もいらっしゃいます。街の中心地にあった総合福祉センターが被災したため市民同士の交流や市街地の賑わいが今も失われている状況です。震災から5年経つのですが、この施設の竣工まであと2年かかるため7年経ってようやく復興が形になっていくことになります。

 この設計で目指したことは次の3つです。1つ目は、様々な境界を越えた交流の場をつくること。年齢や性別、立場などを超えた交流が生まれる場をここにつくろうと思いました。2つ目は、誰もが気軽に集まれる多様な場をつくること。そして3つ目として、この施設を利用する市民の姿によって復興の象徴をつくることです。屋外のテラスをいくつもつくり、そこで活動する市民の姿が街から見えることで被災した街を勇気づけることを考えました。

df67_p1_2.jpg  設計が始まってすぐに市民ワークショップを開催しました。2ヶ月の間に25回、つまり週に3回くらいのペースで開き、その期間に1400以上の意見を聞きました。意見を取捨選択したり、予めワークショップの方向性を決めておくなどの準備はほとんどできないまま、ほぼサンドバックのような状態で市民の意見を聞いていました。中には突拍子もない意見もありましたが、たくさんの声をひたすら聞いていくうちにおぼろげながら市民が何を求めているのか徐々に分かってきたのです。例えば「キッチンスタジオで食育について学びたい」とか「遊び場の中に落ち着いて絵本を読める場所が欲しい」といった何気ない意見は連続的、複合的な使い方を潜在的に求めているのではないかと気づかされました。それを受け、もともとの建物の考え方を根本的に見直しています。当初プロポーザルの段階では図書館や公民館、子育て支援などの機能を別々に考えていたのですが、そういった機能的、管理的区分は利用する側にとってほとんど意味がない、むしろ機能を融合し繋いでいくことが大切だと考え直したのです。そこで図書館や公民館などの機能を、学ぶ、つくる、育てる、遊ぶなどの動詞的な機能にそれぞれ分解し、それらが集まったこの建物独自の新しい機能をつくろうと考えています。

df67_p1_3.jpg  建物の構成を説明します。(図を示して)通常、複合機能をもつ公共建築はこの断面のように機能別の各フロアが積層され箱形になるのが一般的です。この交流センターでは各階の床をずらしてテラスや吹き抜けをつくり、更に床の厚みを変え天井高も変化させます。各フロアを繋ぐように階段やスロープを設け、1階は敷地の高低差に合わせて緩やかに傾斜させます。屋外のテラスや半外部の軒下など様々な場所をつくることで誰もが訪れやすい建物になると考えています。平面構成も同様に、近隣の建物に配慮しつつ不定形な敷地に対応するように規模、形状の異なる平面をずらしながら5層分重ねています。所々に吹き抜けが生まれ、フロア同士を視覚的、空間的につなげます。



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