デザインフォーラムレポート

第35回 「新しい建築の楽しさ2013」展連動企画 講演会"公共建築を考える"(4)

●トークセッション

35回の様子


中﨑 トークセッションを始めますが、まず、まだ発言のない有設計室の鄭さん、サードパーティーの山本さんから感想や質問をお願いします。

 

 

発言中の鄭氏

 有設計の鄭です。

我々を含めて三者の公共建築は最初の段階で、プランではないあるシステムの下に、それを守って、それを拠り所に建築をつくっていこうとするところが共通しています。それがまさに今日的な公共建築の作り方を示しているのだろうと思いました。

僕たちの場合は、先ほど紹介したアートウォールと名付けた亜鉛メッキの鉄板を挿入していくということをコンペの時に掲げていました。そうしたところ、役所の方々の間でその壁が「独り歩き」と言うと言い過ぎかもしれませんが、とにかく受け入れられてしまった。

亜鉛メッキの鉄板をそのまま外壁材として使うことについて「大丈夫か?」という疑問の声も上がったりしたのですが、我々が説明するより先に、役所の方が「これは建築のコンセプトだ」と、擁護してくれるというか、支持してくださる場面もあった。それほど自覚的ではなかったのに、共有されるルールの中に素材を組み込んでいたのです。

 

そこで、髙橋さんに質問したいのですが、保育所でああいう衝撃的なステンレスのエントランス外観とすることについて、また内装や外装の素材決めに際して、市民のみなさんのコンセンサスをどのようにとったのか、あるいは、どう突破されたのか?

 

 

髙橋 基本的に内装は希望を募って、色調は「色彩を用いながら木も使う」という要望があったのでそれを基本に決めました。

また使う側から具体的にイメージが湧かないところについてはこちらで提案し、それが受け入れられたり、反対されて提案しなおしたりしましたが、このプロジェクトではあまり時間がなかったので、もう少しゆっくり話し合いができると良かったかと思うところもあります。

 

ステンレスのギラギラした外壁は最初驚かれたのですが、ふーんという感じで、やめて欲しいとは言われませんでした。僕がけっこう正直に、確信的に提案したためかもしれません。

その時にした説明は、ペンキ仕上や木材やサイディングなどのありがちな既成の外装にすると「建築にしか見えない」ということのような、先ほど申し上げたようなことなどです。

「メンテナンスしやすい」「コストがそれほど高くない」ということなども説明し、鉄骨の亜鉛メッキについても、ペンキ仕上よりもメンテナンス性が良く、緑や木といった自然素材と調和するということをお話しました。

相手に考えてもらうことと、自分が設計者としてやるべきことを僕なりに明確に別けて考えました。

 

 

中﨑 山本さんはどうですか?

 

 

発言中の鄭氏

山本 とてもおもしろかったです。

髙橋さんの例は、生き残るシステムですね。それが、アイデアである、と。

有設計さんの例は僕らが今後、公共建築を考える際にとても象徴的なプロジェクトではないかと思うのです。というのも2009年にあるシンクタンクから衝撃的なデータが発表されましたよね。今後、東京を含めて建物の空室率が40%を超えるだろうと推測されています。

我々は、その空いたスペースや1人当たりの単位面積が大きくなったところでリノベーションをしていく時代になる。そういう意味ですごく象徴的なものだと思いました。

 

また、僕らのプロジェクトを少し補足しますと、小池が少し触れましたように、今後は建築だけでなくまちづくりのほうまで関わっていきたい、と市の方々に提案していて、それが受け入れられつつあります。

我々「サードパーティー」は3つの会社が共同で株式会社をつくりました。まさにサードパーティーと言う「場所」をつくったのです。

今回はコンペで仕事をとれましたが、こういう大きな仕事を取れた際に、1つの会社組織を大きくして対応するのではなく、その都度、チームを決めて取りかかりたい。そういうシステムとしての「サードパーティー」です。

これからまちづくりにも関与していけるのなら、やはりまちのリサーチをしなければなりません。我々は個別の建築だけではなく、もっと広域的にまち全体に関われると思うし、今回はそのきっかけになったのではないかと思っています。


*この後、来場していた地方自治体の職員や一般参加者からの感想や質疑があり、とくに「今日紹介いただいたプロジェクトのように時代に合った公共建築の進め方やあり方が求められていること」またそれが「当初、うまくいっているような自治体でも役所のキーマンが異動してしまうとうまく回らなくなる例」、また「今日のような事例を建築家サイドだけではなく、自治体サイドから積極的に情報発信することが重要であり、その情報があると他の自治体も追随が容易になる」ということなどが指摘され、最後に中﨑氏がまとめて終了した。



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